会社という檻からは抜け出せたのに、辞めたあとの私は人間関係と時間にまた縛られていました。
縛っていたのは、相場のほかに持っている自分の事業です。お客さんがいて外注先がいて、毎日どこかで誰かとの間に問題が起きる仕事です。
その仕事で、売上を10倍にする方法を知っています。作業を10倍にして人を雇って、仕組みを増やす。規模と一緒に、自分の仕事も増えます。それが事業です。
深夜、ふと気づきました。相場だけが違う。扱う額が10倍になっても、やることが一緒なのです。
この記事では、その違いがなぜ起きるのかを書きます。そしてその違いが私の手法の設計基準になった話も書きます。

売上を10倍にするには、自分を10倍にします
事業の売上を10倍にする方法は、はっきりしています。お客さんを10倍にする。すると対応が10倍になる。対応が10倍になると、一人では回らない。だから人を雇う。人を雇えば、教える時間と管理する時間が要る。
外注先が増えてやり取りが増えて、どこかで必ず問題が起きる。その問題を処理するのも自分です。
つまり売上を10倍にするというのは、自分を10倍にするということです。時間か人か仕組みか。どれかで自分を増やさないと、規模は増えません。
私はこの仕事を約4年やって、会社を辞めるところまで来ました。辞めても縛られたのは、そういう仕事だったからです。規模と一緒に自分の手間が増えない仕事は、そう多くありません。
相場は、桁が変わるだけです
相場で私がやっていることを、全部書きます。週末に週足を見て、方向が出ている通貨を数本に絞る。平日は朝か夜に1回と、スマホに通知が届いた時に開いて、4時間足を見る。
揃っていたら1時間足(形によっては15分足)のネックラインの外に逆指値の注文を置いて、立ち去る。約定したら、日足の流れ(15分足で入った時は4時間足の流れ)が崩れるまで持つ。これで全部です。
この手順は、扱う額が10倍になっても一文字も変わりません。週末の作業も通知が来た時の確認も、置く注文の数も同じです。監視する時間も、判断する回数も増えません。増えるのは、注文の数量の桁だけです。
事業では、10倍にするために自分を10倍にしました。相場では同じ自分のまま、器(口座と注文の桁)だけを大きくできます。私が知っている仕事の中で、こういう性質を持っているのは相場だけでした。

だから「年を取っても同じにできるか」で決めています
私の手法の設計基準は、一つだけです。おじいちゃんになっても、同じことができるか。
10倍にしても手順が変わらないことは、年を取っても同じことができることと同じ話でした。どちらも、監視する時間と判断する回数が増えないという意味だからです。
気力や体力や集中力の量に頼る型は、若いうちは回ります。しかし規模を大きくした瞬間か、年を取った瞬間に壊れます。
その日の気持ちや技術の波で結果が変わる型も同じです。私が残したのは、ルールが先に決まっていてその日の調子に関係なく同じ手順で回る型だけです。
だから今は、手法への追加提案が来るたびに一つだけ聞きます。それは、監視する時間か判断する回数を増やすか。増やすなら、たとえ少し儲かりそうでも入れません。増えた分だけ、自分が要るようになるからです。

「でも、大きくしたら何かは変わるのでは」
こう書くと、本当に何も変わらないのかと思われるはずです。正直に言うと、変わるものはあります。数量が大きくなると、売り買いの少ない通貨では思った値段で約定しません。だから取引量の多い通貨に寄せる必要が出てきます。私はそう理解しています。
ただし、それは銘柄を絞るだけです。週末に見る通貨が少し減る。手順は一つも変わりません。むしろ見る本数が減るので、作業は軽くなります。
もう一つ、変わるものがあります。損切りされたときに口座から引かれる数字の桁です。手順は同じでも、それを見た時の自分の気持ちは同じではありません。この話は『同じ2%が、途中から重くなります』に書いたので、ここでは触れません。
だから私は、手法を増やしません。増やすと、増えた分だけ自分が要ります。
事業は、自分を増やすゲームでした。相場は、同じ自分のまま器を大きくするゲームです。
次に読む
——手順は同じでも、桁が変わると気持ちが変わる話。
——同じ設計基準を、生活の側から書いた記事。
規模が変わっても変わらない手順そのものは、無料の一冊に載せています。


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